本研究科 英語教育学専攻の博士課程を2025年に修了した屈 佳伸さん (現 神田外語大学 専任講師)と、三輪 晃司 准教授の共著論文が、心理学の国際誌 Psychological Research に掲載されました。おめでとうございます!
Qu, J., & Miwa, K. (2025). Conceptualisation of event roles in L1 and L2 by Japanese learners of english: The effect of perspectives of event construal on recognition memory. Psychological Research, 89(6), 158. [Open Access]
研究概要:
言語と思考の関係を探るこれまでの研究では、異なる言語間でも「出来事の中の役割(誰が何をしたか)」の認識構造は普遍的とされてきました。しかし、屈さんと三輪准教授の研究は、日本語話者と英語話者で「出来事の見方」が異なる可能性を示しました。本研究では、登場人物や物体が関わる出来事の画像を記憶する課題を通して、言語による出来事の捉え方が記憶にどう影響するかを検証しました。その結果、日本語話者は「人間らしさ(生きているかどうか)」をより重視して記憶する傾向が見られ、英語話者が重視する「行為主体性(誰が行動を起こしたか)」との違いが確認されました。また、英語力の高い日本語話者ほど、英語的な出来事の捉え方に近づく傾向も見られました。
著者コメント(屈 佳伸さん)
このプロジェクトを通じて、指導教員であり共著者でもある三輪晃司先生から、学問的にも精神的にも多大なご支援をいただきました。また、英語教育学専攻の先生方や大学院生の皆さんからいただいた貴重なご意見に深く感謝いたします。さらに、この論文の出版を通して、研究者として科学的誠実さの重要性を改めて学ぶことができました。
本専攻は、「英語教育学」という名前がついていますが、外国語教育はとても学際的な領域です。様々な領域の研究の知見が合わさってはじめて、見えてくることがたくさんあります。本研究のように、心理言語学真正面の研究を追求する学生も大歓迎です!
屈さんのその他の研究はこちら:https://researchmap.jp/jiashenqu
三輪 准教授 Website: https://kojimiwa.com/home-japanese.html
(文責 鈴木駿吾)
第6回『言語教育研究での実験運用』
主催:名古屋大学大学院人文学研究科 英語教育学分野
https://www.hum.nagoya-u.ac.jp/ele/
共催:外国語教育メディア学会(LET)中部支部 外国語教育基礎研究部会(キソケン)
https://www.letchubu.org/SIG/KISO/
データの世紀といわれる21世紀、言語教育研究はどのような方向に進むのでしょうか。私たちは英語教育や第二言語習得に関する専門的な知識、コンピュータを使った実験ツールや教材開発のプログラミング、そしてデータの統計的分析やモデリングなど新しい時代に必要な技能と知識をそなえた人材の育成が使命と考えています。言語教育研究の現在を見据え、その未来を探るために企画した連続公開講座の第6回です。対面での開催です。(遠隔での中継も予定)
日時:2025年 11月 29日(土) 13:00〜15:30(懇親会15:50〜17:00)
会場:名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階 カンファレンスホール

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キャンパスマップ:https://www.nagoya-u.ac.jp/extra/map/index.html (B4-4)
教員、学生、一般の方どなたでも参加できます。
無料 (懇親会費は当日500円)
懇親会(会場隣室):コーヒーとお菓子をご用意する予定です。会費は500円・当日受付です。
プログラム
■13:00-13:10 あいさつ
■13:10 〜 14:10 第一部
「参加者探しはもう迷わない: Prolificで始めるスマート実験術」
脇田 久美(名古屋大学大学院 人文学研究科 博士後期課程)
■14:25 〜 15:25 第二部
「第二言語スピーキング研究概観 - Theory never gets old―」
鈴木 駿吾(名古屋大学大学院 人文学研究科 英語教育学分野 准教授)
■15:25 閉会あいさつ
■15:50 〜 17:00 懇親会(会場隣室)
■参加申し込み
参加人数把握のため下記アドレスから申し込みをお願いします。懇親会出欠もこちらでお願いします。申し込みと同時に受付メールが送られます。
対面での開催です。遠隔での中継も予定しています。オンライン参加希望者には参加アドレスをメールでお知らせします。
2025年8月9日・10日に獨協大学で開催された全国英語教育学会(第50回記念埼玉研究大会)にて、本研究科博士課程在籍の柳田綾さん(桜花学園大学)と、山田慶太さん(豊田工業高等専門学校)が発表を行いました。
柳田 綾
高等学校英語教科書「論理・表現 Ⅰ」のタスク分析:Task-Based Language TeachingとHumanistic Language Teachingの観点から

山田慶太・村尾玲美・杉浦正利
中学校英語教科書の単語・連語の出現頻度は大規模コーパスに見られる英語の使用実態とどの程度相関しているか?

本研究科 杉浦正利教授、村尾玲美准教授をはじめとする研究グループの論文が、2024年言語科学会(JSLS)第25回年次国際大会において、優秀論文賞(JCHAT/CHILDES利用)を受賞しました。
杉浦正利(名古屋大学)・古泉隆(名古屋大学)・江口朗子(立命館大学)・阿部真理子(岡山大学)・村尾玲美(名古屋大学)・阿部大輔(松山大学)
「第二言語としての英語の発達指標の開発に向けて」
▶ JSLS公式サイト: https://jslsweb.sakura.ne.jp/wp/?p=3268
本研究では、日本の中学生約1200人を対象とした英語発話データを、言語研究用のCHATフォーマットで大規模に収集・整理。学年別の発達を精緻に捉えるための新たな分析ツールの開発も行い、英語学習者の文法的成長や誤用傾向をより柔軟に捉える方法を提示しました。今後の言語発達研究に大きく貢献することが期待されます。
また共著者の古泉隆先生(本学 教養教育院)、江口朗子教授(立命館大学)、阿部大輔先生(松山大学)は本研究科の卒業生でもあります。研究科卒業後も、研究チームとして大きな研究プロジェクトを継続していくのも本研究科の特徴かもしれません。おめでとうございます!
またこの場を借りて、本研究プロジェクトにご協力いただいた参加者・関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。


本研究科 鈴木駿吾准教授の共著論文が、国際誌 Studies in Second Language Acquisition(IF = 5.5)において、再現研究を奨励する最も重要な研究として選出されました。
Announcement: https://linguistlist.org/issues/36/1763/
Suzuki, S., & Kormos, J. (2023). The multidimensionality of second language oral fluency: Interfacing cognitive fluency and utterance fluency. Studies in Second Language Acquisition, 45(1), 38-64. https://doi.org/10.1017/S0272263121000899
本研究は、英語スピーキングにおける流暢性 (Fluency) に関わる文法や語彙などの言語知識を調査し、流暢な話し手が持っている言語知識の特徴を明らかにしています。おめでとうございます!
当時の出版体験記はこちら(鈴木氏個人Website)
博士課程においては、専門性を深めながら、多角的な支援と情熱あふれる指導のもとで、研究者として自己成長を遂げることができました。修士課程修了後には、社会人学生としての進学という選択肢を取ることになりましたが、指導教員の先生にはオンラインでご指導いただく等、柔軟にご対応いただき、とても感謝しています。各分野の専門家である教授陣から、幅広い視点と高度な知識を学ぶ貴重な機会に恵まれ、特に苦手としていた統計分野でも丁寧な指導を受けたことで、自信をもって研究を進められるようになりました。結果として、修士論文の内容をまとめた内容が、国際誌に採択されるに至りました。また、名古屋大学の博士課程を修了された多くの方が大学教員として活躍されている姿をみて、博士課程修了まで希望をもって研究に取り組むことができました。私自身、博士課程修了後には大学教員になることができました。これから英語教育や第二言語習得の研究を志す方にとって、名古屋大学での博士課程は最適な学びの場であると、自信を持ってお伝えできます。5年間、実りのある学びをありがとうございました。(橋崎諒太郎)
第5回『言語教育研究データ分析入門』
主催:名古屋大学大学院人文学研究科 英語教育学分野
共催:外国語教育メディア学会(LET)中部支部 外国語教育基礎研究部会(キソケン)
データの世紀といわれる21世紀、言語教育研究はどのような方向に進むのでしょうか。私たちは英語教育や第二言語習得に関する専門的な知識、コンピュータを使った実験ツールや教材開発のプログラミング、そしてデータの統計的分析やモデリングなど新しい時代に必要な技能と知識をそなえた人材の育成が使命と考えています。言語教育研究の現在を見据え、その未来を探るために企画した連続公開講座の第5回です。対面での開催です。(遠隔での中継も予定)
日時:2024年11月16日(土) 13:00〜15:30(懇親会15:50〜17:00)
会場:名古屋大学東山キャンパス 文系総合館7階 カンファレンスホール
キャンパスマップ:https://www.nagoya-u.ac.jp/extra/map/index.html (B4-4)
教員、学生、一般の方どなたでも参加できます。
無料 (懇親会費は当日500円)
懇親会(会場隣室):コーヒーとお菓子をご用意する予定です。会費は500円・当日受付です。
#! プログラム
■13:00-13:10 あいさつ
■13:10 〜 14:10 第一部
「あなたにもできるGLMM ―データの準備から報告まで―」
橋崎 諒太郎(大阪経済法科大学 国際学部 助教)
外国語教育研究および第二言語習得研究で用いられる Generalized Linear Mixed-Effects Model (GLMM) という統計手法のチュートリアルを行います。GLMMに対する説明からはじめて、データの準備方法をご紹介します。その後、GLMMをどのように実行していくかを、私自身の博士論文研究を例にR言語を用いてお見せします。最後に、GLMMの実行の役に立つ書籍や論文をご紹介します。
(Rおよび R studio を事前にインストールしたPCをご持参頂くとその場で試せます。)
■14:25 〜 15:25 第二部
「発話の流暢性に関する研究入門 ―非流暢性マーカーのデータ収集・分析・解釈―」
小林 真実(名古屋大学 言語教育センター 准教授)
スピーキングおよびリスニングにおける非流暢性マーカー(ポーズ、言い直し、同じ語の繰り返しなど)に関する研究手法を紹介します。まず、発話における流暢性マーカーの定義とその種類についてお話しします。次に、流暢性マーカーを用いたデータの収集と分析の方法についてご説明します。最後に、第二言語習得におけるスピーキングおよびリスニングの研究において、流暢性マーカーがどのように使用されてきたか、具体例を交えて紹介します。
■15:25 閉会あいさつ
■15:50 〜 17:00 懇親会(会場隣室)
■参加申し込み
参加人数把握のため下記アドレスまたはQRコードから申し込みをお願いします。懇親会出欠もこちらでお願いします。申し込みと同時に受付メールが送られます。

対面での開催です。遠隔での中継も予定しています。オンライン参加希望者には参加アドレスをメールでお知らせします。
チラシ・ダウンロード
入学当初は実験やデータという言葉にすら馴染みがありませんでしたが、在学中どの先生方も研究初心者がついていけるように根気強く熱心にご指導くださいました。
また、パンデミックの最中でも自主的にオンラインミーティングを開くなど、大学院生同士お互いに励まし合い切磋琢磨でき、仲間にも恵まれた幸せな博士課程でした。
在学中には名古屋大学人文学研究科の研究助成を利用して国際学会で研究発表させていただきました。この発表がきっかけで海外ポスドクポジションのご縁があり、カナダのウィンザー大学へ研究滞在する運びとなりました。
これらのことから、英語教育学分野の第一線を牽引されている先生方の授業の質が高いことは言うまでもなく、授業を通して培った知識を糧に名大から海外へ飛び出していくことは、誰にとっても決して夢物語ではないと考えています。
アカデミアは頑張れば絶対に報われるという世界ではありませんが、少なくとも名大の英語教育学分野は頑張る人を熱心にサポートしてくださる場所だと思います。今後は自分が学生に対してサポートできるよう教員として精進してまいります。本当にありがとうございました。(生田美希)
第4回『言語教育研究でのデータ収集と分析』
主催:名古屋大学大学院人文学研究科 英語教育学分野
https://www.hum.nagoya-u.ac.jp/ele/
共催:外国語教育メディア学会(LET)中部支部 外国語教育基礎研究部会(キソケン)
https://bit.ly/kisoken
データの世紀といわれる21世紀、言語教育研究はどのような方向に進むのでしょうか。私たちは英語教育や第二言語習得に関する専門的な知識、コンピュータを使った実験ツールや教材開発のプログラミング、そしてデータの統計的分析やモデリングなど新しい時代に必要な技能と知識をそなえた人材の育成が使命と考えています。言語教育研究の現在を見据え、その未来を探るために企画した連続公開講座の第4回です。対面での開催です。(遠隔での中継も予定)
- 教員、学生、一般の方どなたでも参加できます。
- 無料 (懇親会費は当日500円)
日時:2023年11月11日(土) 13:00〜15:30
(懇親会 15:50〜17:00ごろ)
会場隣室のオープンホールで懇親会を行います。コーヒーとお菓子をご用意する予定です。会費は500円・当日受付です。
#! プログラム
■13:00-13:10
あいさつ
■13:10 〜 14:10 第一部
「シャドーイング研究入門 ―あなたにもできるデータ収集と分析の方法―」
橋崎 諒太郎(名古屋大学大学院)
学習法としてのシャドーイングの研究方法を紹介します。初めに、クラス内でのシャドーイング指導の効果および、指導に影響を与える要因を明らかにするためのデータ収集と分析の方法を説明します。次に、プログラミングを用いたシャドーイング実験がどのように実施されるか、また、データ収集および分析の方法が、クラスでの指導の効果を検証する研究とどう異なるかを説明します。最後に、シャドーイング研究の実例を、講演者が実際に行った研究のデータを用いて説明します。
■14:25 〜 15:25 第二部
「英語学習振り返りデータの分析と解釈 ―利点と限界点―」
森田 光宏(広島市立大学)
学習者の学習経験を収集したものは、「学習振り返りデータ」と呼ばれ、エビデンスに基づいた教育改善の資料として活用されています。この種のデータは、豊富な示唆を与える場合もありますが、解釈が難しい結果を示すことも多いです。特に、リッカート尺度(例えば、4件法)で回答を求める場合には、大量のデータを集めることができますが、質問内容をよく吟味しないと意味のあるデータは集まりません。本講演では、講演者が関わった英語学習に関する研究から、データの収集法、分析法、そして、結果の解釈についての例を示し、英語学習振り返りデータの利点と限界点についてお話します。
■15:25 閉会あいさつ
■15:50 〜 17:00ころ
懇親会 7階オープンホール(会場隣室)
■参加申し込み
