Department of Occidental History

西洋史学研究室について

西洋史学研究室紹介

名古屋大学西洋史学研究室は、1948年9月に名古屋大学文学部が創設された際、史学科2講座の1つとして西洋古代中世史講座が、翌年には近現代史の講座が設置されことを端緒とします。

以来60年以上に渡って、学界をリードする教官の下で多くの優秀な卒業生を輩出しています。

西洋史学とは

西洋史学とは文字通り「西洋」の「歴史」を研究する学問です。しかし、その研究範囲は時間的にも空間的にも極めて多様であるといえます。中心となるのはヨーロッパであることは間違いありませんが、一言でヨーロッパと言ってもその謂いの意味するところは様々で、古代に目を向ければオリエントの影響があり、近代以降は南北アメリカやアフリカ、アジアまでその影響力を及ぼしています。このような広い範囲をカヴァーするのが西洋史学なのです。

また歴史学における「研究」とは、教科書のようなものに書かれた知識を正確に覚えることではありません。自分で問題を立て、それを検証することが研究です。よく「歴史学ってなにを研究するの?今さら研究することなんてあるの?」と訊かれます。しかし、今まで曖昧に捉えられたり勘違いされたりしてきたことをきちんと明らかにすることや、誰も関心を持たないまま忘れ去られようとしている記憶をきちんと整理することといった作業はまだまだ不十分です。歴史学の研究はまだまだ発展途上であり、これから研究しなければならないことは山ほどあります。

授業

講義 50~100人前後の学生を対象に、板書形式で行われます。
講読 決められたテキストを10人前後の学生で輪読します。予習は欠かせません。
西洋史では、英語、フランス語、ドイツ語、ギリシア語・ラテン語(大学院生)等の講読があります。
演習 1時間に1人ないし2人の発表者を決め、報告を受けたあとに全員で発表内容について議論します。

授業の目標は大きく分けて2つあります。まず、思考力の養成です。西洋史の授業は、単に知識を正確に覚えることを目指しているわけではありません。ですから、自ら問題を発見し、考え、論証し、それを発表することが要求されます。つまり、問題発見力・情報収集力から分析力・総活力・表現力まで、多彩な訓練をする場として授業を捉えているのです。これらの授業を通じて、本物を思考力を身につけてもらうことを主眼としています。

 もうひとつの大きな目標は語学力です。西洋史の場合、研究対象にする地域・時代の言語を習得することは不可欠です。これらを用いて史料を読み解くためだけにとどまらず、グローバル化の時代における円滑なコミュニケーションのためにも外国語の能力は大いに必要とされます。卒業生の多くは、西洋史の授業で身につけた外国語を駆使し、社会で活躍しています。

大学院への進学を考えている方へ

名古屋大学西洋史研究室では、現在大学院生を募集しております。

現在の西洋史研究室には、計5人の教員が在籍しており、古代史から現代史まで広い領域をカバーする教員が在籍しております(詳細は教員ページ)。

また、名古屋大学の学部生でなくても、進学は可能です。実際に、2021年度の大学院在籍者の内半数以上が他大学出身者でした(詳細は院生ページ)。学部生だけではなく、社会人から大学院へ進学された方も在籍しております。大学院卒業後の学生の進学先も様々です。研究者の道に進む方だけでなく、教員専修免許を取得して教員になる方も、公務員や一般企業へ就職する方もいらっしゃいます。

大学院において、大学院生には主体的な姿勢が求められます。研究は勿論のこと、その成果を発表する機会(研究会や学会などでの発表、論文投稿)についても、自ら積極的に探し、参加することが要求されます。このような姿勢はただ研究室にいるだけで身につく程、簡単なものではありません。しかし自らを律し、研鑽を積み重ねる中で習得される様々な能力(情報収集能力、批判的思考能力、課題設定能力、課題解決能力、情報発信能力など)は、研究の世界だけでなく、社会のあらゆる場面において役立つことでしょう。出身大学、経歴、将来設計などに関係なく、研究に意欲のある方がいらっしゃることを期待しております。

院試は9月の前期試験と2月の後期試験があります。いずれの試験においても筆記試験と面接試験を通して、大学院での研究に必要なレベルの学力を測る目的で実施されます。院試の情報につきましてはこちらのページをご参照ください。

近年の卒論修論テーマ

修士論文

・古代エジプトの動物崇拝―その民衆的展開

・ヘレニズム時代エジプトにおけるギュムナシオン

・世紀転換期におけるスコットランドとナショナル・トラスト

卒業論文

・ドドナとデルフォイから見る古代ギリシアの神託

・アメリカ黒人奴隷の歌と集団意識形成

・ナチ党イデオロギーに対する「ふつうの人々」の意識

・「アミアンの裁定」とその英仏両王権への影響―イングランド大陸領の裁判記録の分析を通じて―

・16-17世紀神聖ローマ帝国における郵便事業の興隆と競合―トゥルン・ウント・タクシス家の事例を中心に―

・フランス革命における死刑執行人

・近世イングランドにおけるジェントルマンと風景式庭園

・ナチ期における学生抵抗運動「白バラ」の展開とその影響

・中世末期・近世初期ドイツの都市と楽師―放浪と定住―

・アメリカの第二次世界大戦参戦と世論形成―炉辺談話とラジオの役割―

・政権獲得以前におけるナチ党のプロパガンダポスターの性格

卒業生の声

Aさん

 私は、幼い頃から興味があった古代ギリシア・エジプトの考古学をフィールドにしていらっしゃる周藤芳幸先生の指導を受けたいと思い、名古屋大学文学部の西洋史学研究室を選びました。在学中は、研究の大前提となる一次史料に必要な古代ギリシア語や第二外国語としてドイツ語を勉強しながら、古典史料を読み漁り、卒業論文ではヘレニズム時代の神格化と古代ギリシアの祭典の関係をテーマに研究しました。大学卒業後は、学芸員を志して遺跡発掘業務に従事していましたが、現在は自分の専門を生かすことのできる博物館の学芸員採用に合格し、活動を開始しています。西洋史学専攻の私が学芸員となれたことは、大学での研究の日々と、先生の熱心な指導と応援があったからです。この研究室で学んだことを糧にし、学芸員として誇りをもって邁進していきたいです。

Bさん

 西洋史学専攻は自分の関心に合わせてとことん深く研究できる場所です。各時代に1人以上の教員がいるため、どんな研究テーマにしても手厚い指導を受けることができます。語学力や分析力に自信がないとしても、基礎演習や演習の授業を通じて研究の基礎力を身につけることができるので問題ありません。また、教員・大学院生・学部生間の距離間も近く、研究室では活発な交流や議論が行われています。それらの場で獲得した文章力や発表力は就職活動など、学外においても存分に発揮することができました。私は春からゲームの開発会社に就職します。西洋史で学んだ歴史文化の知識と卒業論文の執筆で磨いた構成力をグローバル市場に向けたコンテンツに役立てていこうと思います。

Cさん

 西洋史学研究室は、文学部の中でも最も多い5人の教授が指導に当たって下さるため、数多くの時代・国の歴史を学ぶことができます。また講義はもちろん、自ら外国語の文献を読む購読の授業や、西洋史に関する論文を読み要点をまとめて発表する演習の授業もあるため、授業を通して自ら歴史を研究する基礎を培うことも可能です。1つの学年に約12人程度の学生が所属している西洋史学研究室は、非常にアットホームな雰囲気で、常に研究室に人が集まり、相談しながら予習に励んでいます。同学年の横の繋がりのみならず院生を含めた縦の繋がりも深く、先輩方に気軽に相談できる環境も整っています。